津軽

津軽太宰治

太宰治の代表作の1つである『津軽』は「新風土記叢書」の1冊として、昭和19(1944)年11月、小山書店から書き下ろしで刊行されました。「こんどの旅に依って、私をもういちど、その津島のオズカスに還元させようという企画も、私に無いわけではなかったのである。都会人としての私に不安を感じて、津軽人としての私をつかもうとする念願である。言いかたを変えれば、津軽人とは、どんなものであったか、それを見極めたくて旅に出たのだ。私の生きかたの手本とすべき純粋の津軽人を捜し当てたくて津軽へ来たのだ。そうして私は、実に容易に、随所に於てそれを発見した。」(「蟹田」より)。巻頭に「ミニ解説」(過去と現在をつなぐ旅:北條一浩)を付け、2010年の常用漢字改定に照らし合わせて読みやすくした縦書版電子書籍です。

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  • 価格100円

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目次

序編

序編連載終了

或るとしの春、私は、生まれてはじめて本州北端、津軽半島を凡そ三週間ほどかかって一周したのであるが、それは、私の三十幾年の生涯に於て、かなり重要な事件の一つであった……

一 巡礼

一 巡礼連載終了

「ね、なぜ旅に出るの?」「苦しいからさ。」「あなたの(苦しい)は、おきまりで、ちっとも信用できません。」「正岡子規三十六、尾崎紅葉三十七、斎藤緑雨三十八、国木田独歩三十八、長塚節三十七、芥川龍之介三十六、嘉村礒多三十七。」「それは、何の事なの?」「あいつらの死んだとしさ……

二 蟹田

二 蟹田連載終了

津軽半島の東海岸は、昔から外ヶ浜と呼ばれて船舶の往来の繁盛だったところである。青森市からバスに乗って、この東海岸を北上すると、後潟、蓬田、蟹田、平館、一本木、今別、等の町村を通過し、義経の伝説で名高い三厩に到着する。所要時間、約四時間である……

三 外ヶ浜

三 外ヶ浜連載終了

Sさんの家を辞去してN君の家へ引き上げ、N君と私は、さらにまたビールを飲み、その夜はT君も引きとめられてN君の家へ泊まる事になった。三人一緒に奥の部屋に寝たのであるが、T君は翌朝早々、私たちのまだ眠っているうちにバスで青森へ帰った。勤めがいそがしい様子である……

四 津軽平野

四 津軽平野連載終了

「津軽」本州の東北端日本海方面の古称。斉明天皇の御代、越の国司、阿倍比羅夫出羽方面の蝦夷地を経略して齶田(今の秋田)渟代(今の能代)津軽に到り、遂に北海道に及ぶ……

五 西海岸

五 西海岸連載終了

前にも幾度となく述べて来たが、私は津軽に生まれ、津軽に育ちながら、今日まで、ほとんど津軽の土地を知っていなかった。津軽の日本海方面の西海岸には、それこそ小学校二、三年の頃の「高山行き」以外、いちども行った事がない……

表記等について

  1. 読みやすさを優先し、原則として旧仮名遣いを新仮名遣いに改めるほか常用漢字表の新字体を使用するが、原文に文語文がある場合はそのかぎりではない。
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  5. ITmedia 名作文庫は、散文作品(小説、随筆、評論、日記等)を主体とする。なるべく初刊本に近いものを底本に選び、全集等、先人たちの校訂を参照する。著者の死後50年を過ぎた作品群の中には、21世紀の今日の観点からみると、差別を始めとした不適切な表現ないしは同表現ととられかねない箇所が見受けられることがあるが、原文の歴史的価値を鑑みて底本どおりとする。