お伽草紙

お伽草紙太宰治

第二次世界大戦の空襲のさなか、防空壕の中で子どもに読んで聞かせる昔話の絵本をもとに、世相と人間を風刺した短篇集です。三鷹と疎開先の甲府で書き上げられ、終戦直後の1945年10月に筑摩書房から書下ろし小説として刊行(初版7500部)されました。「前書き」に続き、周囲に理解されない無用者の老人の孤独を描く「瘤取り」、幻想的な海底描写が秀逸な「浦島さん」、ナルシストの処女と彼女に惹かれる醜い中年男の悲劇を描く「カチカチ山」、嫉妬深い悪妻に悩まされながら少女にほのかな恋心を覚える中年男の夢を描く「舌切雀」を収録。『お伽草紙』(筑摩書房、1945年10月25日発行)を底本に、巻頭に「ミニ解説」(北條一浩)を付けています。2010年の常用漢字改定に照らし合わせ、人名を含め現代仮名遣いへ改めるとともに、常用外漢字にはルビを振り読みやすくした縦書版電子書籍です。

  • 発売日
  • 価格100円

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目次

前書き

前書き連載終了

ムカシ ムカシノオ話ヨ などと、間の抜けたような妙な声で絵本を読んでやりながらも、その胸中には、またおのずから別個の物語が醞醸せられているのである。

瘤取り

瘤取り連載終了

このお爺さんは、お酒を、とても好きなのである。酒飲みというものは、その家庭に於いて、たいてい孤独なものである。このお爺さんは、家庭に在っては、つねに浮かぬ顔をしているのである。と言っても、このお爺さんの家庭は、別に悪い家庭では無いのである。

浦島さん

浦島さん連載終了

浦島太郎という人は、丹後の水江とかいうところに実在していたようである。丹後といえば、いまの京都府の北部である。あの北海岸の某寒村に、いまもなお、太郎をまつった神社があるとかいう話を聞いた事がある。

舌切雀

舌切雀連載終了

この舌切雀の主人公は、日本一どころか、逆に、日本で一ばん駄目な男と言ってよいかも知れぬ。だいいち、からだが弱い。からだの弱い男というものは、足の悪い馬よりも、もっと世間的の価値が低いようである。

表記等について

  1. 読みやすさを優先し、原則として旧仮名遣いを新仮名遣いに改めるほか常用漢字表の新字体を使用するが、原文に文語文がある場合はそのかぎりではない。
  2. 常用漢字表にない漢字、当て字、異字は初出時に振り仮名を付ける。
  3. 難読語で原文を損なうおそれが少ないと思われるものについては仮名に改める。
  4. 振り仮名はブラウザによって表示が異なる。ChromeとInternet Explorerでは文字の上に振り仮名が振られる「ルビ表示」となるが、Firefoxでは文字の後に()で表示される。文字を強調する傍点は、FirefoxとInternet Explorerでは太字で表示される。
  5. ITmedia 名作文庫は、散文作品(小説、随筆、評論、日記等)を主体とする。なるべく初刊本に近いものを底本に選び、全集等、先人たちの校訂を参照する。著者の死後50年を過ぎた作品群の中には、21世紀の今日の観点からみると、差別を始めとした不適切な表現ないしは同表現ととられかねない箇所が見受けられることがあるが、原文の歴史的価値を鑑みて底本どおりとする。